付出は本当に近道? 同じ場所でデビューした関取どうしをくらべてみた
同じ2024年3月にデビューした嵐富士(幕下付出)と寿之富士(前相撲から)。十両に先に上がったのは、いちばん下から始めた寿之富士でした。同じ場所でデビューして関取になった力士を7組くらべてみました。
いちばん下から始めたほうが、先に関取になった
付出の記事を書いていて、ふと気づいたことがあります。嵐富士は、幕下60枚目からスタートできる「幕下最下位格付出」でデビュー。一方で寿之富士は、いちばん下の前相撲からスタート。しかも、ふたりがデビューしたのは同じ2024年3月場所なんです。
普通に考えたら、幕下からスタートした嵐富士のほうが先に関取になりそう。でも実際は、寿之富士のほうが2場所早く十両に上がりました。付出って、本当に近道なのかな? 気になって、同じ場所でデビューして、もう関取になっている力士どうしをくらべてみました。
【写真:番付表の十両の欄】
【ふきだし】スタートが一番下でも、追いこせちゃうんだ!
【用語カード】前相撲(まえずもう)と付出
新弟子は、ふつう番付にのる前の「前相撲」から始めて、序ノ口、序二段、三段目、幕下と一段ずつ上がっていきます。アマチュアで実績のある力士は「付出」で、幕下や三段目からいきなりデビューできます。つまり付出は、何段もとばしてスタートできる制度です。
気になって数えた:同じ場所でデビューした関取たち
【データカード】
「十両まで」「幕内まで」は、デビューした場所の次の場所から数えて、何場所目に上がったか。太字は先に上がったほうです。
2024年3月デビュー
四股名 | デビューのしかた | 十両まで | 幕内まで | 最高位 |
|---|---|---|---|---|
嵐富士 | 幕下最下位格付出 | 14場所 | 16場所 | 前頭16 |
寿之富士 | 前相撲から | 12場所 | 15場所 | 前頭13 |
今回いちばん比べたかったのがこの2人。同じ2024年3月場所にデビューして、嵐富士は幕下60枚目から、寿之富士は前相撲から。スタートの位置は大きくちがうのに、十両に先に上がったのは寿之富士でした。寿之富士は2026年3月、嵐富士は2026年7月に新十両で、2場所寿之富士のほうが早かったんです。幕内にも、寿之富士が1場所早く上がっています。
2023年1月デビュー
四股名 | デビューのしかた | 十両まで | 幕内まで | 最高位 |
|---|---|---|---|---|
伯乃富士 | 幕下15枚目格付出 | 1場所 | 3場所 | 小結 |
藤ノ川 | 前相撲から | 11場所 | 15場所 | 関脇 |
朝白龍 | 前相撲から | 16場所 | 18場所 | 前頭8 |
伯乃富士は1場所で十両という超特急。でも、同じ場所に前相撲からデビューした藤ノ川は、九月場所で関脇まで上がって11勝4敗の準優勝。最高位で見ると、今は藤ノ川のほうが上なんです。
2023年11月デビュー
四股名 | デビューのしかた | 十両まで | 幕内まで | 最高位 |
|---|---|---|---|---|
阿武剋 | 幕下15枚目格付出 | 3場所 | 5場所 | 前頭3 |
旭海雄 | 前相撲から | 11場所 | 18場所 | 前頭16 |
こちらは付出の阿武剋が先行。旭海雄も幕内に上がって、同期の阿武剋を追いかけています。
2022年9月デビュー
四股名 | デビューのしかた | 十両まで | 幕内まで | 最高位 |
|---|---|---|---|---|
花の富士 | 幕下15枚目格付出 | 5場所 | — | 十両13 |
尊富士 | 前相撲から | 8場所 | 9場所 | 前頭4 |
十両には花の富士が先に上がったけれど、尊富士は十両からたった1場所で幕内へ。しかも新入幕の場所で優勝しました。
2022年5月デビュー
四股名 | デビューのしかた | 十両まで | 幕内まで | 最高位 |
|---|---|---|---|---|
嘉陽 | 三段目90枚目格付出 | 13場所 | 18場所 | 前頭16 |
白熊 | 前相撲から | 8場所 | 14場所 | 前頭16 |
ここも前相撲組の勝ち。白熊は三段目付出の嘉陽より、十両で5場所、幕内で4場所早く上がっています。
2021年11月デビュー
四股名 | デビューのしかた | 十両まで | 幕内まで | 最高位 |
|---|---|---|---|---|
欧勝馬 | 幕下15枚目格付出 | 4場所 | 15場所 | 小結 |
金峰山 | 三段目100枚目格付出 | 5場所 | 8場所 | 前頭3 |
幕下付出と三段目付出の対決。十両は欧勝馬が1場所早かったけど、幕内には三段目スタートの金峰山が7場所も早く上がりました。最高位では欧勝馬が小結で上です。
2021年5月デビュー
四股名 | デビューのしかた | 十両まで | 幕内まで | 最高位 |
|---|---|---|---|---|
朝紅龍 | 三段目100枚目格付出 | 14場所 | 21場所 | 前頭7 |
日翔志 | 前相撲から | 15場所 | 26場所 | 前頭17 |
三段目付出の朝紅龍と、前相撲からの日翔志。十両まではたった1場所差。スタートの差がほとんどなくなっているのがおもしろいです。
出典:相撲レファレンス(Sumo Reference)の各力士の成績から筆者が数えたもの(前相撲からの力士は、前相撲を取った場所から数えています。最高位は令和8年11月場所の番付時点)
まとめると…
くらべた組 | 先に十両に上がった | 先に幕内に上がった |
|---|---|---|
2024年3月(嵐富士・寿之富士) | 前相撲から(寿之富士) | 前相撲から(寿之富士) |
2023年1月(伯乃富士・藤ノ川・朝白龍) | 付出(伯乃富士) | 付出(伯乃富士) |
2023年11月(阿武剋・旭海雄) | 付出(阿武剋) | 付出(阿武剋) |
2022年9月(花の富士・尊富士) | 付出(花の富士) | 前相撲から(尊富士) |
2022年5月(嘉陽・白熊) | 前相撲から(白熊) | 前相撲から(白熊) |
2021年11月(欧勝馬・金峰山) | 幕下付出(欧勝馬) | 三段目付出(金峰山) |
2021年5月(朝紅龍・日翔志) | 付出(朝紅龍) | 付出(朝紅龍) |
7組のうち、十両に先に上がったのは付出組が5組、前相撲組が2組。やっぱり付出のほうが早いことが多いけれど、寿之富士や白熊のように、いちばん下から始めて付出の同期を追いこした力士もいます。
それに、伯乃富士と藤ノ川のように、スタートで大きく差がついても、今の番付では前相撲組が上にいることも。金峰山と欧勝馬のように、三段目付出が幕下付出より先に幕内に上がった例もありました。
【手書きメモ】付出は「スタートが早い」だけ。そこから先は本人しだい!
おまけ:大の里と安青錦
同じ場所ではないけれど、同じ2023年にデビューしたのが大の里(5月・幕下10枚目格付出)と安青錦(9月・前相撲から)。大の里は2場所で十両、4場所で幕内。安青錦は7場所で十両、9場所で幕内。スタートは大の里がずっと先でしたが、今ではふたりとも横綱・大関として番付の上のほうで戦っています。
次に行く人へ
【まとめ枠(墨ベタ)】
- 推しの力士の「同期」を調べてみると、ちがうスタートからの競争が見えてきておもしろいです。
- 同期どうしの取組は、ちょっと特別な気持ちで見られます。
- 九州場所では、寿之富士と嵐富士がどこまで上がるかにも注目です。
※この記事の数値は、筆者が自分で調べて数えたものです。正確とは限りませんので、ご了承ください。