四股名の最初の字で部屋がわかる? 部屋ごとの「冠の字」を全力士593人で数えてみた
「琴」なら佐渡ヶ嶽、「千代」なら九重。部屋には師匠や伝統からくる「冠の字」があります。令和8年秋場所の全力士593人を数えたら、約4割が冠つき。佐渡ヶ嶽・九重・大島・片男波は全員でした。
四股名を見ると、部屋がわかる?
前の記事で四股名に使える文字のことを調べたとき、ずっと気になっていたことがあります。「琴」がつく力士は佐渡ヶ嶽部屋、「千代」がつく力士は九重部屋……。四股名の最初の字を見るだけで、どこの部屋の力士か、なんとなくわかるんです。
これって、どれくらい当てはまるんだろう? 部屋によってちがうのかな? と思って、今回は全部の力士を部屋ごとに分けて数えてみました。
【写真:番付表(同じ字が並んでいるところ)】
【ふきだし】番付表で「千代」が20人並んでるの、ちょっと壮観!
【用語カード】冠(かんむり)の字
部屋の力士たちが四股名に共通して使う字のこと。師匠の現役時代の四股名や、部屋に昔から伝わる名前からとることが多いです。新しく入った力士が「冠の字+名字」のような四股名で土俵に上がることもあります。
冠の字は、どこからくるの?
調べてみると、冠の字の由来は大きく分けて3つありました。
- 師匠の四股名から:安治川部屋の「安」は師匠の元関脇・安美錦から、押尾川部屋の「風」は元関脇・豪風から、武隈部屋の「豪」は元大関・豪栄道から、浅香山部屋の「魁」は元大関・魁皇から。音羽山部屋は、師匠の元横綱・鶴竜の「鶴」と「竜」を分けて使っています。
- 部屋に代々伝わる名前から:九重部屋の「千代」は元横綱・千代の山、春日野部屋の「栃」は元横綱・栃木山、高砂部屋の「朝」は代々の「朝潮」から続いているそうです。師匠が代わっても、冠の字はそのまま受けつがれています。
- 部屋の名前から:雷部屋の「雷」、藤島部屋の「藤」、出羽海部屋の「出羽」、時津風部屋の「時」など。
【手書きメモ】師匠の名前/部屋の伝統/部屋の名前 の3パターン
気になって数えた:全力士593人を部屋ごとに
【データカード】
部屋 | 冠の字 | 冠つきの力士 | おもな関取など |
|---|---|---|---|
佐渡ヶ嶽 | 琴 | 15人中15人 | 琴櫻、琴勝峰、琴栄峰 |
九重 | 千代 | 20人中20人 | 千代翔馬 |
大島 | 旭 | 10人中10人 | 旭海雄 |
片男波 | 玉 | 3人中3人 | 玉鷲、玉正鳳 |
伊勢ヶ濱 | 富士 | 32人中30人 | 熱海富士、伯乃富士、義ノ富士、尊富士 |
高砂 | 朝 | 23人中21人 | 朝乃山、朝白龍、朝紅龍 |
安治川 | 安 | 9人中8人 | 安青錦 |
押尾川 | 風 | 12人中10人 | 風賢央 |
武隈 | 豪 | 11人中9人 | 豪ノ山 |
浅香山 | 魁 | 11人中9人 | 魁清城、魁郷 |
音羽山 | 竜・鶴 | 11人中9人 | 竜鳳 |
追手風 | 翔 | 19人中15人 | 大栄翔、翔猿、日翔志 |
春日野 | 栃 | 15人中11人 | 栃大海 |
雷 | 雷 | 10人中7人 | 火雷、若雷 |
玉ノ井 | 東 | 24人中15人 | 東白龍 |
藤島 | 藤 | 12人中8人 | 藤凌駕、藤青雲 |
武蔵川 | 武 | 12人中8人 | 藤武蔵、光武蔵 |
八角 | 北勝 | 11人中7人 | 北勝栄(関取は北の若) |
鳴戸 | 欧 | 13人中7人 | 欧勝馬 |
出羽海 | 出羽 | 16人中5人 | 出羽ノ龍 |
時津風 | 時 | 16人中5人 | 時疾風、時不動 |
出典:相撲レファレンス(Sumo Reference)の令和8年9月場所の番付(幕内〜序ノ口、全45部屋・593人)から、筆者が数えたもの
冠の字がはっきりある21部屋だけで、冠つきの力士は232人。全力士の約4割が、四股名の中に「部屋の字」を持っていることになります。
とくにすごいのが、佐渡ヶ嶽・九重・大島・片男波の4部屋。所属している力士全員が冠つきでした。九重部屋は20人全員が「千代○○」です。伊勢ヶ濱部屋も32人中30人が「○○富士」で、人数ではいちばんの大所帯でした。
冠がない部屋もある
反対に、冠の字がほとんど見当たらない部屋もあります。たとえば二所ノ関部屋は、横綱・大の里や白熊など、四股名はみんなばらばら。若い力士には名字のまま土俵に上がっている人も多くて、「冠で部屋を当てる」作戦は通用しませんでした。境川部屋の「佐田」(佐田の海など)や、木瀬部屋の「肥後」(肥後ノ海など)のように、何人かだけにつく字がある部屋もあります。
部屋が変わると、四股名も変わる
おもしろかったのが、部屋を移った力士のこと。宮城野部屋がなくなって伊勢ヶ濱部屋に移った伯桜鵬は、そのあと「伯乃富士」に改名して、伊勢ヶ濱の「富士」の仲間入りをしました。一方で、同じく移ってきた炎鵬は、四股名をそのまま使っています。陸奥部屋から音羽山部屋に移った霧島も「霧島」のまま。冠をつけるかどうかは、力士や師匠しだいなんですね。
【手書きメモ】伯桜鵬→伯乃富士は「部屋の字」をもらった改名!
番付表の下の方を見ると、「琴寺尾」「琴石田」「欧山田」「朝櫻井」みたいに、冠の字+名字のような四股名もたくさんあります。入門したばかりの力士がまず冠の字をもらって、出世していくうちに本格的な四股名をつけてもらう……そんな流れもあるみたいです。
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【まとめ枠(墨ベタ)】
- 「琴」は佐渡ヶ嶽、「千代」は九重、「朝」は高砂、「富士」は伊勢ヶ濱。この4つを覚えるだけで、番付表がぐっと読みやすくなります。
- 番付表の下の方(三段目・序二段・序ノ口)は、同じ冠の字がずらっと並ぶので、部屋ごとの「色」がいちばんよく見えます。
- 同じ部屋の力士どうしは、本場所では(優勝決定戦をのぞいて)対戦しません。もし冠の字が同じっぽい2人が当たっていたら、じつは別の部屋かも?
※この記事の数値は、筆者が自分で調べて数えたものです。正確とは限りませんので、ご了承ください。