文字

「時間です」のあとは、力士の個性が出る! 最後の仕切りのルーティン図鑑

制限時間いっぱい、最後の仕切りの前は力士の個性がいちばん出る時間。相手をにらむ人、タオルで顔をおおう人、塩をたっぷりまく人、タオルをきちんと畳む人。ルーティンの種類とその意味を調べました。

「時間です」のあと、いちばん個性が出る

前の記事で、仕切りの意味や駆け引きについて書きました。ますます注目なのが行司さんの「時間です」のあと、最後の仕切りに入るまでの数十秒です。

呼出さんからタオルを受け取って、汗をふいて、最後の塩をまいて……。ここでの動きが、力士によって本当にバラバラなんです。じーっと相手をにらむ人、タオルで顔をおおって動かない人、塩をこれでもかってくらいまく人、使ったタオルをきれいに畳んで返す人。見ているだけで「この人らしいな」って思えるのが楽しくて。

【写真:時間いっぱい、タオルを受け取る関取】

【ふきだし】最後の仕切りの前の数十秒、見どころしかない!

【用語カード】時間いっぱい

仕切りの制限時間(幕内4分・十両3分)が終わること。行司が「時間です」「待ったなし」と声をかけて、ここからは仕切り直しなしの本番の立ち合いになります。このタイミングで呼出が力士にタオルを渡し、力士は汗をふいて、最後の塩をまきます。

最後の仕切りのルーティン、5つのタイプ

見ていて気づいたルーティンを、タイプ別にまとめてみました。

タイプ

どんなことをする?

こんな意味がありそう

にらむタイプ

塩をまいたあと、仕切り線をはさんで相手をじっとにらみつける

気持ちで負けない。相手にプレッシャーをかける

タオルで顔をおおうタイプ

呼出さんから受け取ったタオルで顔をおおって、しばらく動かない

まわりの音や視線をシャットアウトして集中する

塩たっぷりタイプ

最後の塩を、手にいっぱいつかんで豪快にまく

気合いを入れる。会場を盛り上げる

タオルを畳むタイプ

使ったタオルを、きちんと畳んで呼出さんに返す

いつもと同じ動きで心を落ち着ける

たたくタイプ

顔やおなか、まわしを手でたたく

体にスイッチを入れる

【手書きメモ】にらむ・顔をおおう・塩たっぷり・畳む・たたく!

にらむ人は、気持ちで勝ちにいく

塩をまいたあと、仕切り線のむこうの相手をじっとにらむ力士がいます。目をそらしたほうが負け、みたいなにらみ合いになると、会場がざわっとして、こっちまでドキドキ。立ち合いの前から、もう気持ちのぶつかり合いが始まっているんですね。

私が見ていてこのタイプだなと思うのは、豊昇龍や霧島。相手から目をそらさない姿に、見ているこっちまで背筋が伸びます。

気合いの入った顔で、スイッチオン

にらむのとは少しちがって、ぐっと気合いの入った表情になる力士もいます。琴櫻は、時間いっぱいになると顔つきがはっきり変わって、「いくぞ」という気持ちが伝わってきます。それから宇良。うまく言葉では説明できないけど、宇良の最後の仕切りはなんだか独特で、つい目が離せなくなるんです。

タオルで顔をおおう人は、自分の世界へ

受け取ったタオルで顔をすっぽりおおって、しばらく動かない力士もいます。何万人もの歓声や視線の中で、ほんの数秒だけ自分だけの世界に入る。きっと、頭の中で立ち合いのイメージを確認しているんだろうな、と思います。

このタイプでよく見るのは、大の里や熱海富士。大きな体がタオルの中で静かになる瞬間、会場の空気までぎゅっと引きしまる気がします。

塩たっぷりの人は、会場も盛り上げる

最後の塩を手にいっぱいつかんで、高く豪快にまく力士は、それだけで拍手が起きます。元関脇・水戸泉は、豪快な塩まきで「ソルトシェイカー」と呼ばれて、海外でも人気になったそうです。塩の量にも、その人の性格が出るのかも。

ただ、今の現役力士で、水戸泉みたいに豪快に塩をまく人はあまりいないかも。だからこそ、たまに大きく塩をまく力士がいると、会場がわっと沸くんですね。

タオルを畳む人は、いつも同じリズムで

使ったタオルを、ていねいに畳んでから呼出さんに返す力士もいます。大事な一番の直前でも、いつもと同じ動きをすることで、気持ちを落ち着けているのかなと思います。見た目は地味だけど、私はこういうルーティン、すごく好きです。

たとえば尊富士は、おしぼりのようにタオルをきちんと畳んで返すタイプ。大事な一番の前でも落ち着いて見えて、それがまたかっこいいんです。

気になって調べた:昔の有名なルーティン

【データカード】

力士

有名だったルーティン

水戸泉

豪快な塩まき。「ソルトシェイカー」と呼ばれて海外でも人気に

朝青龍

時間いっぱいに、左手でまわしをたたく

高見盛

立ち合いの前に体をたたいて気合いを入れる、ロボットのような動き

琴奨菊

立ち合いの前に上半身を大きく後ろにそらす「琴バウアー」

日馬富士

顔が土俵につきそうなほど低くかまえる仕切り

出典:Wikipedia「立合い」、ブログ「Okawari」の力士のルーティンの紹介記事をもとにまとめたもの

昔から、時間いっぱいの動きでファンに愛された力士はたくさんいたんですね。立ち合いの前の数十秒は、力士にとっては集中のための大事な時間で、お客さんにとっては「この力士らしさ」を感じられる時間なんだと思います。

次に行く人へ

【まとめ枠(墨ベタ)】

  • 行司の「時間です」が聞こえたら、立ち合いだけじゃなく、その前の動きにも注目してみてください。
  • 推しの力士のルーティンを覚えると、時間いっぱいになったときに「来るぞ…!」って一緒に気持ちが高まります。
  • いつもとルーティンがちがう日は、調子や気持ちの変化かも? 見くらべると、ちょっとした発見があります。

※この記事の数値は、筆者が自分で調べて数えたものです。正確とは限りませんので、ご了承ください。