なかなか立たないのはなぜ? 土俵に上がってから立ち合いまでの「仕切り」の意味
関取は土俵に上がってから、四股・力水・塵手水・塩・仕切りを何度もくり返して、やっと立ち合い。幕内は最大4分。ひとつひとつの所作には「清める」「武器を持っていない」「呼吸を合わせる」という意味がありました。
なんで、すぐに始めないの?
相撲を見はじめたころ、いちばん不思議だったのがこれ。土俵に上がった関取が、塩をまいて、しゃがんで、手をついて……と思ったら、また立ち上がって戻っていく。それを何回もくり返して、やっと取組が始まるんです。
友だちと見に行ったときも「今の、始まらないの?」って何回も聞かれました。私もちゃんと説明できなくて、調べてみることに。そうしたら、ひとつひとつの動きにちゃんと意味があったんです。
【写真:土俵の上で塩をまく関取】
【ふきだし】あの「行ったり来たり」、ぜんぶ意味があったの!?
【用語カード】仕切り(しきり)
土俵の真ん中にある2本の白い線(仕切り線)の前で、力士がしゃがんで手をつき、立ち合いのかまえをとること。制限時間になるまでは、立たずに戻って塩をまき、また仕切る「仕切り直し」をくり返します。この時間で、相手と呼吸を合わせたり、気持ちを高めたりしています。
土俵に上がってから立ち合いまで
関取が呼ばれてから立ち合いまでの流れを、順番にまとめてみました。
順番 | やること | 意味 |
|---|---|---|
1 | 呼出に名前を呼ばれて土俵へ | ここから制限時間のカウントがスタート |
2 | 四股(しこ)を踏む | 足を高く上げて踏み下ろし、地中の邪気をしずめる |
3 | 力水(ちからみず)をつけてもらい、力紙で口をふく | 神社の手水と同じで、心と体を清める |
4 | 塵手水(ちりちょうず) | 柏手を打って両手を広げ、手のひらを見せる=武器を持っていない、正々堂々と戦う誓い |
5 | 塩をまく | 土俵を清めて邪気をはらう。けががないようにという願いも |
6 | 仕切り(何度もくり返す) | 仕切り線の前で手をつき、にらみ合って相手と呼吸をはかる |
7 | 時間いっぱい → 立ち合い | 行司が「時間です」。最後の塩をまいて、呼吸が合ったら立つ |
【手書きメモ】清める(四股・力水・塩)+誓う(塵手水)+合わせる(仕切り)
こうして並べると、前半は「土俵と自分を清める」、塵手水で「正々堂々と戦うと誓う」、そして仕切りで「相手と呼吸を合わせる」という流れになっているんですね。
力水は、勝った力士からもらう
力水をつけるのは、同じ側(東なら東)で前の取組に勝った力士です。負けた力士は力水をつけないので、そのときは次に取る控えの力士がつけます。「勝ちの水」をつなぐって、なんだかいいですよね。
相撲はなぜ「合図なし」で始まるの?
ほかのスポーツなら「よーい、ドン」の合図があるけど、相撲の立ち合いには合図がありません。ふたりが呼吸を合わせて、同時に立った瞬間が始まり。だから、仕切りをくり返しながら相手の様子をはかる時間が必要なんです。立ち合いは、両手をしっかり土俵につくのが原則になっています。
行司の「時間です」「待ったなし」は、制限時間がきたという合図。ここからは、もう仕切り直しはできません。呼出がタオルを渡したり、力士が顔やまわしをたたいて気合を入れたりするのもこのタイミング。会場がいちばん盛り上がる瞬間です。
気になって調べた:仕切りと塩の数字
【データカード】
項目 | 数字 |
|---|---|
制限時間:幕内 | 4分 |
制限時間:十両 | 3分 |
制限時間:幕下以下 | 2分 |
制限時間ができたのは | 1928年1月場所(ラジオ中継に合わせて) |
塩をまくのは | 基本は十両以上の関取(時間に余裕があれば幕下以下でも) |
塩の量(1日) | 約35キロ |
塩の量(1場所) | 約520キロ |
出典:制限時間・導入時期はSPAIA「大相撲の仕切りの制限時間」、塩の量は文春オンライン(製造元の説明)を参考にしたもの
昔は制限時間がなくて、呼吸が合うまで何度でも仕切り直していたそうです。それが1928年、ラジオで相撲の中継が始まるのに合わせて、制限時間が決められました。放送時間に収めるためだったんですね。
【手書きメモ】制限時間ができたのはラジオのため!
そして塩の量にびっくり。1日に約35キロ、1場所で約520キロも使われるそうです。塩をまくのは、基本的には十両以上の関取。幕下以下の取組では力水がなく、塩もまかずにすぐ立ち合うことがほとんどです。ただ、取組の進行が早くて時間に余裕があるときは、幕下以下の力士が塩をまくこともあります。仕切りをじっくり見られるのは、やっぱり関取の取組ならではなんですね。
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【まとめ枠(墨ベタ)】
- 呼出が名前を呼んだら制限時間スタート。幕内なら最大4分、十両は3分です。
- 行司が「時間です」と言ったら、次がほんとうの立ち合い。そのときは目をはなさないで!
- 塩のまき方は力士ごとにちがいます。たくさんまく人、そっとまく人、見くらべると楽しいです。
- 力水を渡しているのが誰かを見ると、同じ側の前の取組で誰が勝ったかがわかります。
※この記事の数値は、筆者が自分で調べて数えたものです。正確とは限りませんので、ご了承ください。